地域構造2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

道央・道北・道東・道南 — 広域医療圏ごとの人材偏在マップ

この記事の要点

「札幌で探してるんですけど、あまり良い条件の求人が見つからなくて」

皆さま、こうした相談を受けたとき、僕がまず聞くのは「札幌圏以外は検討しましたか」という質問です。多くの方が最初、意識せずに札幌圏(道央)だけで求人を探しています。無理もありません。人口が集中しているぶん求人の絶対数も多いからです。ただ、北海道は広域医療圏ごとに人材の充足度がまったく違う土地です。今回は、道央・道北・道東・道南の4圏域を、働く人の目線で地図にします。

0. 前提 — 「北海道」は一枚岩ではない

北海道は日本の都道府県の中でも面積が突出して広く、複数の広域医療圏に分かれています。それぞれの圏域で人口動態も高齢化の進み方も違うため、介護人材の需給バランスも一様ではありません。「北海道で探す」と考えるより、「どの圏域で探すか」という発想に切り替えるだけで、見える選択肢の数が変わってきます。

1. 道央(札幌圏) — 求人数は最多、競争もある

道央、特に札幌市とその近郊は北海道で最も人口が集中しているエリアです。施設数も求人数も道内で最も多く、選択肢の幅は広いのが特徴です。一方で、求職者も集中しやすいため、条件の良い求人には応募が集まりやすい面もあります。都市部ならではの利便性(交通機関・生活インフラ)を重視する方には向いていますが、「求人数が多い=入りやすい」とは限らない点は押さえておくべきです。

2. 道北(旭川圏) — 中核都市と広い後背地

旭川市を中心とする道北エリアは、道央に次ぐ規模の中核都市を持ちつつ、後背地には人口減少が進む地域も広がっています。この構造から、旭川市内は比較的求人が安定している一方、周辺の町村部では人材不足がより深刻になりやすい傾向があります。中核都市の利便性と、地方特有の人材不足による採用のしやすさの両方を狙える、バランスの取れたエリアと言えます。

3. 道東(釧路・帯広圏) — 人材不足が構造的に続く

釧路・帯広を中心とする道東エリアは、人口減少と高齢化が同時に進んでいる地域が多く、介護人材の不足感が道内でも強く出やすい圏域です。率直に言うと、この構造こそが求職者にとってのチャンスにもなります。人材確保に積極的な施設が多く、住居支援や好条件の求人が出やすい傾向があります。「地方だから条件が悪いはず」という思い込みは、このエリアに関してはむしろ逆であることが少なくありません。

4. 道南(函館圏) — 本州に近い立地と独自の需要

函館市を中心とする道南エリアは、本州とのアクセスの良さという地理的な特徴を持ちます。観光業との関わりが深い土地柄もあり、介護施設の求人にも独自の傾向が見られることがあります。道央ほどの求人数はありませんが、道東・道北と同様に人材確保に積極的な施設が一定数存在します。

4-1. 枝節 — 「圏域」と「市町村」を混同しない

一つ補足します。同じ圏域の中でも、中核都市と周辺町村では事情がまた違います。たとえば同じ道東でも、帯広市の中心部と郡部の町では、施設の数も通勤手段も生活インフラもまるで別物です。求人を見るときは「道東の求人」という粗い解像度で判断せず、その施設の住所から半径10kmの生活圏を地図アプリで一度眺めてください。スーパー・病院・賃貸物件の分布を見るだけで、そこでの生活の想像がつくかどうかが分かります。想像がつかない場所に、条件だけで飛び込むのはおすすめしません。逆に、想像してみたら「意外と暮らせそうだ」と分かることも多いのです。

5. エリアを比較するときの3つの視点

圏域を比較検討する際に見るべき視点を3つ挙げます。1つ目、住居支援の有無。地方エリアの施設ほど、寮や住宅手当を用意しているケースが多く、移住のハードルを下げてくれます。2つ目、生活コストと車の必要性。地方は家賃が安い一方、車が生活必需品になることが多く、維持費を含めた総合的な収支で比較すべきです。3つ目、体験入職や施設見学の機会。可能であれば実際に現場の雰囲気を確認してから決断することをおすすめします。処遇改善加算の反映度合いもエリアによって差が出ることがあるため、あわせて確認すると精度が上がります。

5-1. 枝節 — 家族がいる場合の検討順序

家族帯同での移動を検討する場合は、順序を一つ加えてください。自分の職場より先に、家族の生活(配偶者の仕事・子どもの学校・親の通院)の移動可能性を確認することです。単身なら30分で決められることが、家族がいると数ヶ月の対話になります。それは悪いことではなく、家族と地図を一緒に眺める時間そのものが、転職の納得感を作ります。焦らず、しかし比較の手だけは止めないでください。

6. エリア移動を迷っている方への視点

誤解がないように申し上げると、道央にとどまることが悪い選択というわけではありません。生活基盤・人間関係を含めて、今の圏域で働き続ける合理性がある方も多くいます。ただ、「エリアを移動する」という選択肢を最初から排除してしまうのは、もったいないというのが僕の実感です。特に若く身軽な方ほど、エリアを変えることで得られる経験値とキャリアの選択肢の広がりは大きくなります。

7. 対比 — 札幌に固執した人と、圏域を広げた人

モデル化した対比をひとつ。どちらも「初任者研修修了・実務2年・28歳」という経歴だと思ってください。

Aさんは札幌市内に限定して転職活動をしました。求人数は多いのですが、経験2年の同条件の応募者も多く、希望する条件の施設には届かず、結局前職とほぼ同条件の施設に移りました。Bさんは同じ経歴で、道東の帯広圏まで検討範囲を広げました。人材確保に積極的な法人の求人に、住宅手当と引越し支援が付いていることを見つけ、生活コストの安さも含めて試算した結果、手取りの実質的な価値は札幌の希望条件を上回りました。慣れない土地への不安はありましたが、体験入職で現場の雰囲気を確かめてから決断しています。

誤解のないように言うと、Bさんの選択が常に正解というわけではありません。家族の事情や人間関係で札幌を離れられない方は大勢います。ただ、比較すらせずに1つの圏域に閉じるのは、選択ではなく思考停止です。比較した上で札幌に残るなら、それは立派な意思決定です。

8. 実務パート — 3圏域比較シートを30分で作る

今日からできる実務に落とします。所要時間は30分です。白紙に横3列の表を書き、検討し得る圏域を3つ(例:札幌圏・旭川圏・帯広圏)並べてください。各列に次の5行を埋めます。①その圏域の求人数の肌感(求人サイトで施設形態を固定して検索した件数)。②給与レンジの目安。③住居支援の有無(「寮」「住宅手当」で絞り込み検索)。④想定家賃と車の要否。⑤自分がその圏域に住むことへの心理的な抵抗(正直に、10点満点で)。

⑤をあえて数値化するのがポイントです。条件面でBの圏域が勝っていても、心理的抵抗が9点なら、おそらく定着しません。逆に「調べてみたら抵抗が3点まで下がった」という発見が、このシートの一番の収穫になることもあります。

(結論)圏域の違いを知るだけで、選択肢は何倍にもなる

まとめます。①北海道は道央・道北・道東・道南で人材充足度がまったく違う。②道東・道北は人材不足が強い分、住居支援・好条件の求人が出やすい。③エリア比較は給与だけでなく住居支援・生活コストまで含めて総合的に見る。

自分がどこまでエリア移動を検討できるかは、適性診断の設問でも扱っています。まずは自分の許容範囲を整理してみてください。

皆さんいかがでしたでしょうか。地図を広げるだけで、見える景色は変わります。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 北海道の中で介護人材が特に不足しているエリアはどこですか?

一般的に、人口減少と高齢化が同時に進んでいる道東(釧路・帯広圏)や道北(旭川圏)は、道央(札幌圏)と比べて人材の不足感が強い傾向にあります。ただしこれは施設や時期によって変動するため、具体的な求人の充足状況は個別に確認する必要があります。

Q. 地方エリアに移住して介護職に就くメリットはありますか?

あります。人材不足が強いエリアほど、住居支援や好条件の求人が出やすい傾向があります。また競争が札幌圏より緩やかなため、未経験・無資格からでも採用されやすいケースが多いです。生活コストが札幌圏より低いエリアもあり、手取りの実質的な価値が上がることもあります。

Q. エリアを選ぶときに求人票以外で確認すべきことは?

住居支援の有無、車の必要性と生活コスト、そして可能であれば施設見学や体験入職の機会です。求人票の給与だけでなく、そのエリアで実際に生活したときの総合的な収支まで含めて比較することをおすすめします。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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