職場環境2026-08-10監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

外国人介護人材と共に働く北海道の現場 — 制度と役割の実際

この記事の要点

「先生、うちの施設にベトナムの技能実習生が来ることになったんですが、日本人スタッフとしてどう接したらいいのか、正直まだ実感が湧かないんです」。道東のある特別養護老人ホームで採用相談に乗っていたとき、現場の主任からそんな言葉を受け取ったことがあります。

0. 結論から言うと

結論を先に申し上げると、北海道の介護現場で外国人材と共に働くことは、もはや特別なことではなく、多くの施設にとって日常的な体制の一部になりつつあると僕は感じています。EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能1号という4つの制度は、目的も在留期間も転籍のしやすさもそれぞれ異なり、施設ごとに受け入れている制度の組み合わせもばらばらです。だからこそ転職を考える皆さんには、「外国人材が多いかどうか」ではなく「どの制度の方をどんな体制で受け入れているか」を見る視点が大切になってくると考えています。この記事では、制度の違いと日本人スタッフの役割の変化、そして職場選びで見るべき視点を、僕が道内の現場で見てきた実例を交えて整理していきます。

1. 北海道の外国人介護人材受け入れの現在地

厚生労働省が公表している外国人雇用状況の届出制度は2007年に義務化され、それ以降、医療・福祉分野を含めて届出件数は増加傾向が続いています。介護分野はもともと国内人材だけでの充足が難しく、処遇改善加算による賃金の底上げが進む一方で、道内では札幌圏以外の広域で人材の偏在が続いている地域事情があります。そうした背景から、道内の特別養護老人ホームやグループホームでも、外国人材の受け入れを検討・実施する法人が増えていると僕は現場の相談を通じて実感しています。

ただし、僕の体感値で言うと、道内で外国人材を受け入れている施設のすべてが同じ制度・同じ体制というわけではありません。都市部の大規模法人はEPAや在留資格「介護」を軸に長期定着を見込んだ採用をしている一方、地方の中小規模施設では技能実習からのスタートが多いなど、規模や地域によって傾向に差があります。実際、道東のある町では特養1施設に対して技能実習生が3名配属される一方、隣接する市の大規模法人では在留資格「介護」を持つ職員が10名以上在籍しているという、同じ道東圏内でも体制の濃淡がはっきり分かれる例を見たことがあります。この差を知らずに「外国人材のいる職場」とひとくくりにしてしまうと、実際に働き始めてから想定していた体制と違って戸惑う、というケースにつながりかねません。

2. 4つの制度はどう違うのか

介護分野で外国人材を受け入れる制度は、大きく分けて次の4つがあります。目的・在留期間・転籍のしやすさが異なるため、まずは表で全体像を押さえておきましょう。

制度主な目的在留期間の目安転籍
EPA(経済連携協定)二国間の経済連携に基づく人材交流介護福祉士候補者として最長4年、資格取得後は更新可原則同一施設での就労が前提
在留資格「介護」介護福祉士資格を持つ専門人材の就労更新により長期就労が可能比較的自由
技能実習技能移転による国際貢献区分により最長5年原則不可
特定技能1号人手不足分野での即戦力就労通算5年まで同一分野内であれば可能

この中で在留資格「介護」を得るには介護福祉士国家資格の取得が前提となっており、専門用語を含む一定水準の日本語力が確認された人材だと言えます。一方、技能実習生は配属直後の日本語力に幅があり、来日直後は簡単な指示の理解にも時間がかかる場面があるというのが現場からよく聞く声です。制度ごとの前提を知っておくと、施設見学の際に「この施設はどの制度の方を中心に、どんな教育体制を敷いているのか」という質問がしやすくなります。転籍の可否も見落とされがちですが、技能実習生は原則転籍ができないぶん施設側が長期育成計画を立てやすく、特定技能の職員は同一分野内であれば転籍できるぶん、待遇や職場環境への納得感がより定着に直結しやすいという違いも押さえておきたいところです。

3. 現場で日本人スタッフの役割はどう変わるか

冒頭でご紹介した特別養護老人ホームでは、技能実習生の受け入れをきっかけに、それまで口頭伝承に頼っていた排泄介助や食事介助の手順を、写真つきの手順書として整備し直しました。最初は「外国人スタッフのため」に作った資料でしたが、実際に運用してみると、日本人の新人職員の教育にも同じ資料がそのまま使えることに主任自身が気づいたそうです。配属から3ヶ月が経つ頃には「教える側が毎回違う説明をして新人を混乱させる」という、以前からあった課題そのものが目立って減ったと報告を受けました。

別の施設では、逆のパターンも見てきました。受け入れ初日から手順書もないまま現場に配属された技能実習生が、指導役の職員一人に質問を集中させてしまい、その職員が半年ほどで疲弊して退職を申し出た、という事例です。この2つの事例からわかるのは、外国人材の受け入れは日本人スタッフの役割を「教える側」に固定するだけのものではなく、受け入れ体制の設計次第で現場全体の教育の仕組みを底上げすることもあれば、特定の職員に負担を集中させて逆効果になることもあるということです。言い換えれば、日本人スタッフに求められるのは「外国語ができること」ではなく、「伝える手順を言語化して共有すること」だと僕は考えています。この力は、外国人材の有無にかかわらず、これからの介護現場で価値を持ち続けるスキルだと思います。

4. ケースで見る2施設の比較

もう少し具体的に、受け入れ体制の差が現場に何をもたらすかを、僕が見てきた2施設のケースで比べてみます。この比較は制度の優劣ではなく、あくまで体制設計の差による結果の違いとして読んでいただければと思います。

観点A施設(体制あり)B施設(体制なし)
受け入れ前の準備写真つき手順書を事前整備口頭伝承のまま配属
指導体制シフト内で複数人が交代指導役1名に集中
日本語支援勤務時間内に学習時間を確保本人任せ
半年後の結果新人教育全体の負担も軽減指導役が疲弊し退職申し出

この2施設を分けたのは、外国人材の国籍でも日本語力でもなく、受け入れる前にどれだけ準備の時間を割いたかでした。A施設は配属の約2ヶ月前から手順書の整備に取りかかっていたのに対し、B施設は「来てから考える」姿勢だったと聞いています。転職を検討する皆さんが見学時に確認すべきは、まさにこの「準備の有無」の部分だと僕は考えています。

5. 職場選びで見るべき3つの視点と確認手順

外国人材と共に働く職場を選ぶ、あるいは既に外国人材がいる職場に転職を検討する際、僕が施設見学の場でお勧めしている確認ポイントは次の3つです。

実際の確認手順としては、見学の30分程度の時間を使って次の順番で聞くとスムーズです。まず最初の5分で「どの制度の方が何名いるか」を確認し、次の10分で手順書やマニュアルを実際に見せてもらえるか尋ねます。残りの時間で「指導は何名体制か」「定着年数の長い方は何年目か」を具体的な数字で聞く。この順番だと、制度の全体像から体制の実態へと話が自然に深まっていきます。この3つは、実は外国人材がいてもいなくても、職場の教育体制の成熟度を測る指標そのものだと僕は考えています。外国人材の受け入れに積極的な施設ほど、こうした仕組みを整えている割合が高いというのが、僕がこれまで見てきた道内の現場の体感値です。

6. よくある失敗とその対処

よくある失敗の1つ目は、制度の違いを理解しないまま「外国人材がいる=人手不足が解消されている」と思い込んで入職し、実際には教育担当が自分一人だけだったというミスマッチです。対処としては、見学時に「教育担当は何名体制か」「シフトの中で指導時間がどう確保されているか」を具体的に聞くことが有効です。目安として、指導時間が勤務時間の中に週数時間でも明示的に確保されているかどうかは、体制の本気度を測る一つの基準になります。

2つ目の失敗は、技能実習生と特定技能の職員を同じ扱いで考えてしまい、転籍の可否など制度上の違いを踏まえずに業務分担を組んでしまうケースです。この違いを人事担当者だけでなく現場のリーダー層も理解しているかどうかで、受け入れ後の定着度合いは変わってくると僕は感じています。

3つ目の失敗は、日本人スタッフ側が「教えるのは自分たちの仕事ではない」という姿勢を無意識に取ってしまい、外国人スタッフが孤立してしまうケースです。先ほどの指導役一人が疲弊した施設では、実は他のスタッフも「自分には関係ない」と距離を置いていたことが、後になってヒアリングでわかりました。対処としては、指導役を固定するのではなく、シフト内で複数人が交代で声をかける仕組みに変えるだけでも、負担の偏りと孤立感の両方が和らぐというのが僕の見てきた実例です。声かけといっても難しいことではなく、朝の申し送りのときに一言添える、休憩を一緒に取るといった小さな積み重ねで十分だと思います。

7. (結論)

ここまで、北海道の介護現場における外国人材受け入れの制度と、共に働く日本人スタッフの役割の変化についてお伝えしてきました。制度の違いを知ること自体が目的ではなく、その先にある「教育体制がどれだけ仕組み化されているか」を見極める視点を持つことが、これから介護職として働く皆さんにとっての実質的な判断材料になると僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。外国人材と共に働くことを前向きな変化として捉えられる職場を、ぜひご自身の目で見極めていただければと思います。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 外国人介護スタッフとのコミュニケーションは大丈夫なのでしょうか?

在留資格や制度によって求められる日本語レベルは異なりますが、在留資格「介護」の取得には介護福祉士国家資格の合格が前提となっており、専門用語を含む一定水準の日本語力が確認された人材です。一方で技能実習生などは配属直後の日本語力に幅があるため、施設側の手順書整備や声かけの見える化といった工夫が現場では効果を上げています。コミュニケーションの土台は外国人側の努力だけでなく、受け入れ側の準備にも大きく左右されると考えています。

Q. 技能実習生と特定技能の介護職員はどう違うのですか?

技能実習は技能移転を目的とした制度で、在留期間は区分により最長5年、原則として職場を自由に変えられません。特定技能1号は人手不足分野での即戦力としての就労を目的とした制度で、通算5年まで在留でき、同一分野内であれば転籍が可能という違いがあります。目的と転籍のしやすさが異なるため、施設側の受け入れ体制や求められる支援の内容も変わってきます。

Q. 外国人材が多い職場を選ぶと日本人スタッフの負担は増えますか?

教育体制が整っていない職場では指導役に負担が集中しやすくなるのは事実だと思います。ただし僕が見てきた事例では、外国人材の受け入れをきっかけに手順書やマニュアルを整備した施設ほど、結果的に日本人の新人教育の負担も軽くなる傾向がありました。負担が増えるか減るかは、受け入れ体制が仕組み化されているかどうかで大きく変わると考えています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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